マサトです。
少し前から、空き家問題がニュースなどで報道されるようになりました。
少子高齢化や地方の人口数減少などにより空き家が増え、そのような空き家を価値がないからと相続放棄をし、結果的にそのまま放置されてしまう。
確かに、何の価値もない、むしろ固定資産税の負担がかかるだけの不動産を、相続したくないというのは当然です。
しかし、実は空き家を相続放棄するほうが負担がかかるケースもあるのを知っていますか?
本日は、空き家を相続放棄した場合のリスクについてお話しします。
「価値が全くない不動産は、相続しないほうがいいですよね?」
「相続放棄した空き家については、なんの関係もないですよね?」
不動産を相続放棄した場合、実はそれで全く関係がなくなるわけではありません。
管理義務が残っている可能性があるのです。
管理義務があるとしたら、不動産に何かあって近隣住民に被害が出た場合などに、損害賠償請求をされてしまうということです。
損をしたくなくて空き家を相続放棄したのに、逆に損をすることになる可能性があるのですね。
相続放棄をすると最終的に空き家は国の財産となる

相続放棄をすると、最終的に空き家はどうなってしまうのですか?

最終的には、国に帰属することになります。
相続放棄とは、相続人である地位を放棄することなので、簡単に言えば相続人ではなくなるということです。
相続放棄については、こちらの記事をお読みください。
そして、相続人が相続放棄をすると、次順位の相続人に権利が移ります。
例えば、妻と子が相続人だった場合は、妻と子が相続放棄をすると相続人の父母へ、相続人の父母が相続放棄をすると相続人の兄弟姉妹へ、というかたちです。
これは非常に単純なケースですが、このように権利が移っていって、最終的に誰も相続人がいなくなれば、相続財産管理人が選任され相続財産の清算を行い、相続財産は国に帰属することになります。
つまり、最終的には国が空き家を管理することになるのです。
しかし、実際にはこんな簡単にいきません。
相続放棄をしても実は空き家の管理義務が残っている

相続放棄をしたので、もう空き家とはなんの関係もないですよね?

そんなことはありません。管理義務がある可能性があります。
「相続放棄をしたら、空き家とはもう縁が切れる」、そのように思ってらっしゃいませんか?
実は、簡単には切れないのです。
民法940条では、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」と規定されています。
つまり、相続財産管理人に引き継ぐまでは、一定の管理義務があるということです。
もちろん、自分が相続放棄をした後に、他の相続人が空き家を相続してくれれば、何の問題もありません。
しかし、相続人全員が相続放棄をしてしまったら、空き家を管理する人は誰もいなくなってしまいます。
何かあったときにそれでは困ってしまうので、このような規定があるのです。
相続財産管理人選任の申立をしないと賠償請求されるかも

空き家の管理義務を果たさなかった場合、どんなことになるんですか?

近隣住民に被害が出た場合は、損害賠償請求される可能性があります。
おそらく、ほとんどの人は相続放棄をしたのに管理義務があるとは思っていないでしょう。
また、相続財産管理人の選任が必要なことを知らない方もいらっしゃいます。
つまり、相続財産管理人選任の申立をしない人がたくさんいらっしゃるのです。
相続財産管理人の選任には、費用もかかります。
相続財産の中から支払われるのが普通ですが、足りなければ申立人が支払わなければなりません。
損をしたくなくて空き家を相続放棄したのに、費用なんて払いたくないのが当たり前です。
費用の面からも、相続財産管理人選任の申立をしないという方も多いのです。
しかし、前述した管理義務があります。
相続財産管理人が決まらないと、それまではずっと管理義務を果たさなければなりません。
もし、水漏れや倒壊などがあり、近隣住民に被害が出てしまったら、損害賠償請求をされるかもしれません。
空き家を相続放棄した場合のリスクの一つが、これです。
損害賠償請求までされなくても、何かあればクレームなどがくる可能性もあります。
相続財産管理人選任の申立をしても安心できない

相続財産管理人選任の申立さえすれば、安心なんですね。

そんなことはありません。ここにもリスクは存在しています。
では、相続財産管理人選任の申立を行い、相続財産管理人さえ決まれば安心なのでしょうか。
実は、ここにもリスクがあります。
相続財産管理人は、相続財産の清算を行って国に財産を引き継ぎます。
空き家が売れるわけありませんので、不動産のまま引き継ぐわけです。
しかし、国だってそんな不動産を欲しいわけがありませんよね?
処分してから引き継いでくれという話になります。
そうなると、相続財産管理人はなんとか不動産を引き取ってくれる人を探し続けるしかありません。
その間、ずっと相続財産管理人の報酬が発生するのです。
これも、空き家を相続放棄した場合のリスクの一つです。
空き家に資産価値がなく、固定資産税などの支払いをしたくないから相続放棄をしたのに、相続財産管理人の報酬をずっと払うことになったら、相続放棄をした意味がありません。
まとめ
相続放棄は、債務がある場合や相続争いなどを避けるためには、良い方法だと思います。
しかし、安易に相続放棄をしてしまうと、後で様々なリスクが発生する可能性があります。
他の相続人が、確実に相続してくれるのであれば、自分は相続放棄をしても特にリスクはありません。
しかし、そうでないのであれば、まずは弁護士などの専門家に相続放棄の件を相談してみてください。
空き家の問題についても、弁護士によっては対応できる場合もあります。